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平成10年度調査報告

1.はじめに

私たちが今まで主に研究していたカゲロウはフユウ目に属し、他にもセキシ目(カワゲラ目)・モウシ目(トビケラ目)・コウシ目・トンボ目・ハンシ目・ショウシ目についても多少調査を行った。上記に列挙した昆虫、特にカゲロウ、カワゲラ、トビケラなどは釣りのエサとして使われ、幼い頃に川で遊んだことのある人なら、川底の石をひっくり返し、そこにはりついているそれらの姿を目にしたことがあるだろう。

今年は今までとは異なり「川の流速・水深・川底の形状などによる水生昆虫相の違い」というテーマを定め、主はカゲロウであるが、他の水生昆虫についても調査を行い、われわれの未熟な同定能力を向上させ、この発表をきっかけにして一般の人々にも水中に広がる生物の世界に目をむけていただけたら幸いである。

2.カゲロウ類の紹介

今年の調査で取れた水生昆虫は6目でありフユウ目ではヒラタカゲロウ、チラカゲロウ、マダラカゲロウ、トビイロカゲロウ、コカゲロウなどがとれ、他にもモウシ目・セキシ目・コウシ目などがとれた。これらについて簡単な紹介を載せておく。この他にも、トンボ目・ハンシ目・ソウシ目・ショウシ目などがとれたが、数が少なかったので紹介は控えさせてもらう。

フユウ目

ヒラタカゲロウ科

この科の幼虫は、渓流性幼虫の主要素で、その名称が表す通り体全体が平らであるのが特徴。体長は10〜15mmでカゲロウ類では中型である。日本各地の上流から下流にわたり生息する。

【 ヒラタカゲロウ属 】

渓流に広く分布し、主に早瀬の石面に付着して生活する。

【 ヒメヒラタカゲロウ属 】

日本に広く分布するカゲロウの1つであり、渓流の石櫟底に生息する。鰓葉の第1対は大型で腹面で左右相接する。

【 タニガワカゲロウ属 】

渓流昆虫の主要素であるがやや流れの緩やかな場所に生息する。河川の全域に分布し、湖岸の石櫟底でも発見されている。尾には刺毛か剛毛がある。

マダラカゲロウ科

日本に広く分布するカゲロウの1つである。幼虫はいかめしく、ずんぐりとした丈夫な体で刺の多い頭部や足、のろのろとした行動などを特徴とする。生活場所は河川の石の窪みや割れ目、石間や緩流部の底にたまった落ち葉やゴミ、石間にひっかかった流木などに生息し、体肢に泥をかぶることが多い。

トビイロカゲロウ科

日本に広く分布し、河川渓流や時には泥沼、ダム湖などにも見られる。

【 ヒメトビイロカゲロウ属 】

日本に広く分布している。鰓は全て同形で、二叉している。

チラカゲロウ科

日本各地の河川渓流の早瀬に生息する。北海道から沖縄まで分布する。日本で確認されているチラカゲロウ科はチラカゲロウ属1属のみである。

【 チラカゲロウ属 】

1属1種のみで、体長は18mm位の大型である。全体がチョコレート黒褐色。河川の上、中、下流に分布し有機汚水が流入する水域にも見られる。

コカゲロウ科

名称が示すように、幼虫、成虫ともに体長3〜8mmの小型のカゲロウである。この科には、4属が含まれるが、この科の研究はまだ十分されていない。

毛翅目(トビケラ目)

毛翅目は中生代初頭の三畳紀(約2〜2.3億年前)に鱗翅目と共通の祖先から分化したと推測されている。鱗翅目は幼虫、成虫ともに一般に陸上で生活するのに対し、毛翅目の幼虫は淡水中で生活する。成虫期間は一般に短く、その形態はあまり変化に富まず、色彩も褐色など地味な種類が多い。

ヒゲナガカワトビケラ科

頭部と前胸部の地色は黄褐色ないし茶褐色で、黒褐色の点紋条紋がある。河川に生息するトビケラでは、最も大型で生息数も多く、河川の生物生産上も重要である。幼虫は河川の浅瀬や平瀬に生息する。河川水中の流下物を摂取する雑食性である。

カワゲラ目

カワゲラは現存する有翅昆虫のうち最も原始的な昆虫群の1つである。カワゲラの成虫は比較的丈夫で、体は一般的に黒色、褐色あるいは黄色である。体の大きさは一般に3cm以下である。モモの害虫として知られる種もある。

広翅目

完全変態する、中・小型の昆虫である。完全変態する昆虫の中で最も原始的な群の1つである。幼虫は全て水生である。一般に中・大型で、紙魚形あるいは円筒形でやや扁平である。幼虫も成虫と同様に口器が発達し、人間に噛みつく事もある。幼虫は全て活発な捕食性である。

ヘビトンボ科

渓流における広翅目の代表的な昆虫はヘビトンボ科に属する昆虫である。幼虫は水中で他の水生昆虫を捕食して成長する。これらの幼虫は水生で濃褐色ないし黒褐色の丈夫な感じのもので強力な口器のついた比較的大きな頭部を持つ。成虫は体長40〜45mmの大型の昆虫である。

3.川の流速・水深・川底の形状などによる水生昆虫相の違い

目的

川の流速・水深・川底の形状などの川の状態の違いにより、そこでとれる水生昆虫にも違いが見られるかどうかを見る。

調査方法

トラップの略図

2mm×2mmの網目の網を川の下流に置き、下図に示すように50cm×50cm内の石を洗い、その範囲内の石がなくなるまで、あるいは水深の深い場所や、川底が砂利地の場合は虫が採れなくなるまで行った。網にかかった虫は全て採集した。

調査場所

今回の調査場所は、栃木県藤原町高徳の鬼怒川と鹿沼市草久の大芦川の2ヶ所で行った。この2ヶ所は川の流速が速かったり、遅かったり、川底が砂利(大きくてビー玉)だったり石(小さくて野球ボール)であったり、水深も浅い所や深い所があり、地形のバラエティーに富んでいる場所である。

栃木県図

結果

今回調査を行った2ヶ所の川を流速、水深、川底の形状の違いにより、6地点に分けた。次に調査結果を載せる。


<表1> 大芦川の流速と水深の数値
地点 丙宗遅、浅)
調査日流速(cm/sec)水深(cm)
7/317.40215
8/1013.98610
8/2312.8820
9/1117.97620
平均15.56116.25
地点◆丙宗遅、深)
調査日流速(cm/sec)水深(cm)
7/510.69670
8/1010.752100
8/2311.69100
9/1113.034100
平均11.54392.5
地点(石、速、浅)
調査日流速(cm/sec)水深(cm)
7/554.1825
8/1061.40425
8/2365.07230
9/1167.6930
平均62.086527.5
地点ぁ弊弌遅、深)
調査日流速(cm/sec)水深(cm)
7/558.56296
8/1053.186105
8/23110.69895
9/11107.68890
平均82.533596
地点ァ弊弌遅、浅)
調査日流速(cm/sec)水深(cm)
7/59.61810
8/1015.66610
8/2311.2715
9/1112.4615
平均12.253512.5
地点Α弊弌遅、深)
調査日流速(cm/sec)水深(cm)
7/514.574105
8/1015.61105
8/2312.36295
9/1112.992105
平均13.8845102.5

<表2> 鬼怒川の流速と水深の数値
地点 丙宗遅、浅)
調査日流速(cm/sec)水深(cm)
8/718.935
8/2010.62620
9/1016.1730
9/2026.01240
平均17.92731.25
地点◆丙宗遅、深)
調査日流速(cm/sec)水深(cm)
8/721.042100
8/2020.370
9/1011.24260
9/2013.902100
平均16.621582.5
地点(石、速、浅)
調査日流速(cm/sec)水深(cm)
8/768.34840
8/2082.62830
9/1071.13430
9/2065.32810
平均69.359527.5
地点ぁ弊弌速、深)
調査日流速(cm/sec)水深(cm)
8/7105.01495
8/20149.20490
9/1074.4880
9/2073.29110
平均100.24793.75
地点ァ弊弌遅、浅)
調査日流速(cm/sec)水深(cm)
8/716.22615
8/2015.98820
9/1020.67825
9/2018.29820
平均17.797520
地点Α弊弌遅、深)
調査日流速(cm/sec)水深(cm)
8/77.2895
8/207.14100
9/10
9/2012.88105
平均9.1100

<表3> 地点ごとの調査日別の取れた水生昆虫(大芦川)
地点 丙宗遅、浅)
調査日流速(cm/sec)水深(cm)
8/718.935
8/2010.62620
9/1016.1730
9/2026.01240
平均17.92731.25
地点◆丙宗遅、深)
調査日流速(cm/sec)水深(cm)
8/721.042100
8/2020.370
9/1011.24260
9/2013.902100
平均16.621582.5
地点(石、速、浅)
調査日流速(cm/sec)水深(cm)
8/768.34840
8/2082.62830
9/1071.13430
9/2065.32810
平均69.359527.5
地点ぁ弊弌速、深)
調査日流速(cm/sec)水深(cm)
8/7105.01495
8/20149.20490
9/1074.4880
9/2073.29110
平均100.24793.75
地点ァ弊弌遅、浅)
調査日流速(cm/sec)水深(cm)
8/716.22615
8/2015.98820
9/1020.67825
9/2018.29820
平均17.797520
地点Α弊弌遅、深)
調査日流速(cm/sec)水深(cm)
8/77.2895
8/207.14100
9/10
9/2012.88105
平均9.1100

<表4> 地点ごとの調査日別の取れた水生昆虫(鬼怒川)
地点 丙宗遅、浅)
調査日流速(cm/sec)水深(cm)
8/718.935
8/2010.62620
9/1016.1730
9/2026.01240
平均17.92731.25
地点◆丙宗遅、深)
調査日流速(cm/sec)水深(cm)
8/721.042100
8/2020.370
9/1011.24260
9/2013.902100
平均16.621582.5
地点(石、速、浅)
調査日流速(cm/sec)水深(cm)
8/768.34840
8/2082.62830
9/1071.13430
9/2065.32810
平均69.359527.5
地点ぁ弊弌速、深)
調査日流速(cm/sec)水深(cm)
8/7105.01495
8/20149.20490
9/1074.4880
9/2073.29110
平均100.24793.75
地点ァ弊弌遅、浅)
調査日流速(cm/sec)水深(cm)
8/716.22615
8/2015.98820
9/1020.67825
9/2018.29820
平均17.797520
地点Α弊弌遅、深)
調査日流速(cm/sec)水深(cm)
8/77.2895
8/207.14100
9/10
9/2012.88105
平均9.1100

<表5> 大芦川の地点ごとの水生昆虫の総数
地点 丙宗遅、浅)
調査日流速(cm/sec)水深(cm)
8/718.935
8/2010.62620
9/1016.1730
9/2026.01240
平均17.92731.25
地点◆丙宗遅、深)
調査日流速(cm/sec)水深(cm)
8/721.042100
8/2020.370
9/1011.24260
9/2013.902100
平均16.621582.5
地点(石、速、浅)
調査日流速(cm/sec)水深(cm)
8/768.34840
8/2082.62830
9/1071.13430
9/2065.32810
平均69.359527.5
地点ぁ弊弌速、深)
調査日流速(cm/sec)水深(cm)
8/7105.01495
8/20149.20490
9/1074.4880
9/2073.29110
平均100.24793.75
地点ァ弊弌遅、浅)
調査日流速(cm/sec)水深(cm)
8/716.22615
8/2015.98820
9/1020.67825
9/2018.29820
平均17.797520
地点Α弊弌遅、深)
調査日流速(cm/sec)水深(cm)
8/77.2895
8/207.14100
9/10
9/2012.88105
平均9.1100

<表6> 鬼怒川の地点ごとの水生昆虫の総数
地点 丙宗遅、浅)
調査日流速(cm/sec)水深(cm)
8/718.935
8/2010.62620
9/1016.1730
9/2026.01240
平均17.92731.25
地点◆丙宗遅、深)
調査日流速(cm/sec)水深(cm)
8/721.042100
8/2020.370
9/1011.24260
9/2013.902100
平均16.621582.5
地点(石、速、浅)
調査日流速(cm/sec)水深(cm)
8/768.34840
8/2082.62830
9/1071.13430
9/2065.32810
平均69.359527.5
地点ぁ弊弌速、深)
調査日流速(cm/sec)水深(cm)
8/7105.01495
8/20149.20490
9/1074.4880
9/2073.29110
平均100.24793.75
地点ァ弊弌遅、浅)
調査日流速(cm/sec)水深(cm)
8/716.22615
8/2015.98820
9/1020.67825
9/2018.29820
平均17.797520
地点Α弊弌遅、深)
調査日流速(cm/sec)水深(cm)
8/77.2895
8/207.14100
9/10
9/2012.88105
平均9.1100

<表7> 大芦川の水生昆虫の種ごとの総数とその割合
割合

<表8> 鬼怒川の水生昆虫の種ごとの総数とその割合
割合

5.考察

6.おわりに

今年は今までにやったことのなかったカゲロウ以外の水生昆虫についても調査を行った。全く未知の領域だったので殆どの種類について「科」あるいは「目」までしか同定ができなかった。同定能力の向上を目指していたのに思っていたほどの成果が見られなかったのは残念である。調査自体は寒かったり、危険な場面もあったが、班員同士の親睦を深めることができたと思う。

最後に調査に協力してくれた会員の皆さんに感謝の意を表し終わりとする。


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